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調査結果

がんと向き合うママ支援プロジェクト 調査研究事業報告ダイジェスト

三菱財団 平成24年度社会福祉研究・事業助成「がん治療・療養中の親の子育て支援に関する調査研究事業」
  • がんと向き合うママ支援プロジェクト(フォーママ)
  • URL: http://www.rakkan.net/mama
  • スタッフ:佐々木綾子・岩本ゆり・岩本貴・竹内博美・島津ちほ

がんと向き合うママ支援プロジェクトは、平成24年度三菱財団社会福祉研究・事業助成プログラムの助成を受け、がん闘病中あるいはがんを経験したママを対象としたアンケート調査やグループインタビュー(プチ企画会議)、ママ同士が集えるサロンを通して、発病・闘病による生活環境や社会関係の変化、子育て上の課題や悩みを明らかにし、がんと向き合うママたちの子育て支援体制を確立すること、同じ状況下に置かれたより多くのママたちを繋ぎ、一人ひとりの貴重な経験をお互いに共有しながら、今後の子育てに役立ててもらうことを目的として実施した。対象は、中学生までの子どもを持ち、現在がん闘病中、またはがんを経験したことがあるママ。アンケート調査:有効回答者数:96名(期間2012年11月7日~2013年8月6日)、グループインタビュー(プチ企画会議)全3回:延べ13名(実人数9名)、ママサロン全3回:参加人数:延べ26名(実人数16名)。

発病したことにより、子育て上の手助けに関する変化が「有る」と答えた者は66%

友人、夫、(義)両親による手助けが増えた、子どもとともに実家に帰った、人を雇った、訪問看護や保育園を利用し始めた、「市役所の生活課に相談し、収入がなくなった3ヶ月後からは保育料は無料になった」「スクールバスのない幼稚園で先生がこどもの送迎をしてくれた」という回答があった。

病気によって生じた家族関係・人間関係の変化が悩みやストレスをもたらしている

がんのママたちの抱える悩み、不安、ストレスの内容

  • 自分が病気を受け止めきれず、精神的に余裕がなくなってしまった。本当ならこの先いつまで生きていられるかわからないのだから、子どもには笑顔で接し楽しい毎日を過ごしたりしたいのに、ついあれもこれもと子供に求めてしまい、上手くいかずに怒ってしまったりする。そういう自分に自己嫌悪に陥る。
  • 癌になって怖いのは、死ぬかもしれないという不安や体の苦痛ではありません。私にとって怖いのは、こどもの成長が見届けられないかもしれないということです。子供のお稽古ごとなど、何か新しいことをスタートするときに、1年後、2年後は私は元気でサポートできてるんだろうかと、ついつい考えてしまい躊躇してしまいます。ホルモン治療が続いているので病気のことを忘れるということが困難で、常に頭のどこかで病気のことがよぎってしまいます。
  • 周りの病気に対する理解があまりに偏ってしまっている。癌=死という考えが定着していて、前向きに頑張ろうとする気持ちを折られてしまう。例えば、2人目が欲しいと強く希望しており、長い辛い治療が終わったら、絶対に2人目を作ろう!その為にも自分が健康でいなきゃ!頑張ろう!って思っても、産まれてくる子供が母親がいなきゃ可哀想と死ぬ前提で話をされ、2人目を作る事を頭から反対される。1人居るからいいじゃない!と言われる事が苦痛。
  • フルタイムで今後働けるのか。転移する可能性は?夫も病気もちなので、二人とも倒れたら子どもはどうなるの?私が死んだら、二人でやっていけるのか。夫の両親も高齢。でも私の両親に頼るのは嫌なような夫。何かあった時のサポートシステムが整っていないから不安。
  • 私がいなくなったら・・・と思うと。それを考えるだけで胸が苦しく涙が出ます。
  • 幼稚園での父兄の人間関係が不安で、入園を先のばしにしていまっていること。
  • 子どもにいつ頃伝えるかについて。また、子どもに伝わることが怖いため、ママ友にも一切伝えていない。

ママの集まりに興味が有る者の9割が「ひとりではないという安心感」を求めている

ママたちの声:集まりにどのようなことを期待するか?

  • 闘病中のママさんならではの悩みなどを分かち合いたいです。
  • 自分ひとりだけではないと思いたし、ママとしてお話がしたい。
  • 同じような環境にある人と話ができるだけでも十分だと思う。話をすることでストレス発散になる。
  • 病気だけのつながりというのは躊躇があり、今まで患者会などには参加してきませんでした。ただ、職場でママであり闘病中の先輩と知り合うことができて、子供のことや仕事のことも楽しく話しつつ、気持ちを共有することができてすごく支えになっています。同じ病気でも深刻度は人それぞれです。癌か癌じゃないかも雲泥の差ですが、同じ癌でもすごく差があります。初発、再発でも全然違うと思います。
  • 期待することが、望む形で得られるとも思っていませんし、同病というだけで、なにもかも共有できるとも思っていません。ただ「子を思う気持ち」はどの状況の人であっても同じなのかなと思います。
  • とにかく家族や友人にも再発するかも、という私の不安な気持ちや、娘の不登校で悩んでる気持ちを理解してもらえないのが辛いので、そういう気持ちを理解してくれて励ましあえる仲間がほしいです。
  • まわりに同病の人がおらず、なかなか不安や悩みを吐き出す機会がありません。また、上の子に障害があるため同じような境遇の方はどのようにして日々をすごしているのかが知りたいです。
  • 年齢的にも、状況的にも、近い部分があると思うので、お互い励まされたり、共感しあえたり、闘病秘話に笑いあったり、前向きにがんばるパワーになると思う。
  • 仕事に家事育児と多忙なママ患者の集いだと思うので、お話しサロン以外にも、実生活で即活かせる情報…免疫力アップのエクササイズや食事など…が得られる勉強会も開催して欲しいです。

「がんと向き合うママサロン」の魅力と効果

プロジェクトでは、実際に悩みやストレスを話したり、実生活での家事・育児の工夫や周囲にどこまで、どのように伝えているかといったことについて話をすることができる「ママサロン」を試行的に開催した。サロンは全3回、主に週末の午後2~3時間とし、参加者同士の自由トークを中心に、スタッフが簡単な司会やファシリテートを行いながら進めた。

魅力:子どものことを安心して話せる「がん」で「ママ」のリアルな繋がり

「がん」であり「ママ」であるということによって生じるストレスや悩みについて話し合い、病気を持ちながらも子育てを可能としてくれるような情報を得られる場、また話をするなかで得られる仲間意識、「ひとりじゃないという安心感」やこれからも前を向いていく力を得る場として「ママサロン」を位置づけていくことの重要性が明らかになった。

効果:ガス抜き、情報交換、エネルギー補給、未来への希望、社会貢献意識の醸成

「ママサロン」のなかでは、大きくわけると、①「がん、あるある話」と②「がん&ママ、あるある話」の二つについての話題が交錯した。例えば、「がんであることを誰に話すか」という点では、「ママ」であるかないかに拘わらず「がん患者」に共通の悩みとなるが、「がん&ママ」の場合には、自分が「がん」であると打ち明けることがママ友、幼稚園や学校、PTA、子供のお稽古事先など「子供同士の関係の変化」や「子供と子供の所属先の関係の変化」にも影響を及ぼすため、悩みが複雑になってくる。また、「乳がんと気づかずに母乳をあげていたけれど、子供への影響は大丈夫?」「手術後、子供と一緒にお風呂に入るときはどうしている?」「食事はどうしてる?」といったことに関する情報や経験談の共有、「自分への治療費がかかって、子供の進学先の選択肢が狭まってしまった」「抗がん剤治療中のお弁当づくりが大変すぎ」「好き嫌いしてるから、運動してないから、夜更かしするから、いつも怒ってるから…だからがんになったみたいに、全部がんに結び付けられちゃう」「子供の学校の調理実習に参加して、カツラを結べと言われて困った」「髪が抜けてお風呂がつまって困るし、いい機会だから、子供に『現実をみろー!』と言って髪の毛を一緒に抜いてもらった」等、「がん&ママ」であることによる悩みや不安を打ち明け、毎日の工夫や家事育児、食事に関する情報の交換、失敗談や笑い話をしあうことで、「ひとりではない」と感じ、エネルギーを補給していた。

ママサロン参加者の声
子どものことを話せて良かったです/ママ友達として安心して話せました/これからの子どもの成長を見通せるような話が聞けて良かったです/笑ったり、お話しができただけでとてもよかったです/ママとしての悩みは共通するものがあり、とても楽しかったです/話し合えてすっきりしました。いっしょに闘っている感じがしました/自分が一人ではないと思えました/やっぱり同じような年代で子供がいて同病の人たちと会うのは健常者のお友達といるのとは訳が違うので大変満足しました。わかりあえるのって素晴らしいです/心が軽くなり、人生に前向きになれました/元気をいっぱいもらいました/元気に頑張っている人がたくさんいることが分かりました。

未来への希望、社会貢献意識の醸成

「ママサロン」に参加した背景に、「病気になって、『自分の経験が少しでも人の役に立てば』という気持ちがあった」という意見が複数あった。同じ病気の人と悩みを話したり、飲み会をしたりというのも楽しいけれど、それだけだと後に残らないということ、「今、どん底にいる人に、『病気でもこんなに元気』『今はつらくても絶対に大丈夫』というメッセージを発したい」と、自分たちが未来への希望となり、後に続くがんのママたちが、普通に、前を向いて生活していけるような応援メッセージを発する貢献者となりたいという気持ちを満たすものとしても「ママサロン」は機能していた。

がんと向き合うママたちから、がんと向き合う仲間たちへ
一人じゃないからと伝えたいです/今、やれることを精一杯やろう。頑張って下さいね!/不安を少しでも無くしたいです/未来を見てください/遠くの親戚より、近くの同病仲間!/無理せず、使える支援は受けて、子供との時間を大切にしてください。家庭の中だけで抱え込まず、病院、医師、相談室や、子供が通う保育園、幼稚園、小学校、役所などどんどん相談しましょう!きっと何か知恵がもらえると思います。連携が大事だと思います/今は経過観察ですが、再発の怖さとはいつも戦っています。今、病気と闘っているママさんみんなが健康で楽しい毎日を過ごせるよう祈っています。

プロジェクトに頂いた声

  • このようなプロジェクトが広がり、がん闘病・療養中のママが、相談し合える場や、前向きに病気と向き合える場ができるといいなと思いました
  • 同じように子供が居て闘病を頑張っている方々と、悩みを少しでも共有できたら、心強く思えたり孤独感が薄れるかもしれないなと思います
  • 健康な方には想像もできないほど、大きい不安を感じておられる方も多いと思います。不安の材料は人それぞれなのでしょうが、少しでも心が穏やかに、日々を送れる要素が得られる内容が盛り込まれているプロジェクトになると、嬉しいと思います
  • 闘病中のママの集まりというのも良いのですが、若いころに癌になって今50歳60歳を迎えて元気にされている方の経験をお聞きしたいなーと思います。そういう方たちから勇気をもらいたいです
  • 私は治療後もまだ子供を望んでいるので、治療後に出産された方がいれば、そういった方の経験も聞いてみたいと思う
  • ママでがん、特に小さな子供がいて、働いていてなど、似たような境遇の方に出会うことが少なかったので、このプロジェクトで似たような悩みなどを共有できるのは、大変意義があると思う
  • こうした癌患者の会がもっともっと拡がるといいなと思います。ネットでは、相手の表情や本当の気持ちはなかなか見えてこないのではないかと思います
  • 時々患者を止めてしまいたいと思います。そういう、擦り切れそうな気持ちを支える何かが欲しいといつも願っています・闘病中・療養中は心の変化が激しいと思いますので いつ行っても そこに誰かが必ずいて話しを聴いてくれたりもしくは、その空間にいるだけで癒される場所を作って欲しい。
  • このアンケートに答えたことで「自分の心の声」に耳を傾けることができました。きっかけをいただいてありがとうございました。
  • 私は術後7年経過し、病気のことは忘れて生活している時間のほうが多くなりました。でも、特に抗がん剤治療中の子供への接し方にはすごく悩みました。今、そういう悩みを持っている方が、こういうサロンで悩みを話せるなら、とても心強いことだと思います
  • サロンへの参加は私にとってはとても勇気のいることですが、同じような立場の人を自分で探すのは難しいこと。このようなプロジェクトを立ち上げていただき嬉しいし、興味があります
  • このプロジェクトを知り、嬉しかったです。成人ではない子どもを抱える母親の不安は、自分のことよりも、子どもに対することが大きいと思います。今後も様々な活動を期待しています。
  • 治療中は、誰にも相談が出来ず治療や子育てで精一杯でしたが、今回のプロジェクトやサロンなどこれから、沢山増える事を願います
  • 一度罹患すると、根治したかどうかよくわからない月日が続きます。5年で卒業できない、また長期にわたり再発におびえなくてはならないという病気の性格上、不安を語り合える同志のような存在があると勇気がわきます。
  • 子育てしながら同じくがんと戦うママと会って話しがしたいです
  • 自分は障害がある子を抱えて治療しています。同じような方がたくさんいると思います。自分の治療、子供の通院、訓練など日々、いっぱいいっぱいです。もっとまわりに病気に対しての理解、そして援助が広がればと思います。
  • 不安な気持ちが爆発しそうでいろんなブログを読み漁り、ここに辿りつきました。闘病中のママは、元気なママたちに囲まれて心が孤独です。プロジェクトで救ってください。

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