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プレインツリーのコアコンポーネンツ

患者の視点から病院モデルを作ったアメリカのNPO法人の紹介です。(2007/2/25更新)

人と人の交流

プレインツリーは、人が人をケアし、人が人を手助けすることをその理念として掲げています。これはつまり、患者や家族に対して、思いやりある、患者一人ひとりに合わせたケアを提供すること、そしてそれに加えて、スタッフが自分自身や仲間同士を互いにどのようにケアするか、そして組織がどのようにしてスタッ フをサポートし、互いを育てはぐくむような風潮を作り上げていくか、も重視していることを意味します。患者体験を行うスタッフ向けの研修を通じて、病院スタッフは患者の視点から見た病院経験を細部にわたり知るようになり、より全体的な視点から見たケアを提供できるようになります。患者自身が自分の健康管理に積極的に関与できるようにするケアモデルを採用して、患者、家族、そしてケア担当者間のパートナーシップを築き上げれば、治癒効果を高めることができるでしょう。

健康と治癒を促す建築と内装の設計

プレインツリーは、物理的な環境も患者の治癒の過程において極めて重要だと考えています。医療施設の設計に際しては、患者の尊厳と個性を重視する効果的な レイアウトを実現できるよう、心がけなくてはなりません。美意識をもって施設を設計し、温かく家庭的な、無機質ではない設計にすることにより、技術ばかりではなく、人間にも価値を置いていることを強調することが大切なのです。患者自身による管理やプライバシー、そして家族の参画を妨げるような建築上の障壁は取り除かれなくてはなりません。設計を通じて、メッセージを伝えられるようにすることが不可欠なのです。

整理整頓しやすい設計を実現し、その状態を維持することで、患者は行動範囲を広げて、自分が「安全な場所」にいるという感覚を強く持つことが可能になりま す。プレインツリーの施設を設計する際には、図書館、キッチン、ラウンジ、自由に活動を行うことのできるアクティビティ・ルーム、教会、そして庭を盛り込むことで、患者や家族が独立した活動を行ったり、社交的な活動を行ったりすることもできるような空間を提供しています。また、家族が宿泊することもできるように、快適な部屋と寝具類も用意しています。心癒される庭、噴水、水槽、そして滝が設置され、患者と家族、そしてスタッフにリラックスできるような、そ してエネルギーを得られるような、癒し効果の高い瞑想的な自然環境を提供しています。

患者の治癒効果を高める環境を提供するのと同時に、スタッフに対しても、癒し効果の高い環境を提供することが重要です。医師や看護師、そしてその他のスタッフは皆、自身の職場環境から多大な影響を受けるものです。殺伐とした、冷たく人間味のない空間で、患者の治癒を手助けしようとするのは非常に難しいものです。スタッフ用のラウンジやスタッフ限定の空間を作ることも、治癒効果の高い環境を作り出す上で非常に重要な要素となります。

食事による栄養摂取の重要性とその効果

栄養を摂取することは、健康を維持および回復するために必要なだけではなく、楽しみとして、安らぎの源として、そして身近な安心感を伝える要素としても重要視されています。医療施設は、栄養を摂取することにより健康を維持し、病気を治癒するという科学的なデータを踏まえた上で、食べて美味しく、健康的な食生活を提供するお手本にもならなくてはなりません。このためには、カフェテリアで低脂肪のメニューを提供したり、自動販売機でも健康的な食品を提供したりする取り組みを行うのも一案です。病院施設内にキッチンを設ければ、家族が患者のために好物を作ることもできるようになります。また、キッチンがあることで、家にいるときと同じように患者と家族が集まりやすくなり、サポートグループを作り上げるきっかけにもなります。

栄養士やボランティアによって調理の実演や教室も開催します。栄養に関する教育は、患者の現在の病気改善に寄与するばかりでなく、家族全体が健康的な生活 を送ることにも寄与することになります。パン職人のボランティアがパンやマフィン、そしてクッキーを焼いた香りによる「アロマセラピー」を実施して、身体の改善と治癒を促す環境を作り出します。

情報と教育により、患者に力を

プレインツリーの患者中心のケアモデルと、消費者を意識した治癒のためのアプローチは、正に現代の消費者が求めている考え方なのです。現代は医療の消費者主義の時代であり、知識と力を持つ数多くの消費者は、自身の医療にもっと参画したいと望んでいるのです。プレインツリーは、正にこうした望みをかなえることができるのです!

プレインツリーのケアモデルでは患者や家族の教育を重視しており、患者一人ひとりのためにカスタマイズした情報パッケージを作成したり、ケア協力のためのミーティングを催したり、患者の医療へのアクセスを確保したりする取り組みを行っています。カルテ公開の方針により、患者は自分の医療記録を読んだり、書き込みを行ったりすることもできるようになります。自己投薬プログラムでは、患者は自分の薬をベッドサイドに置いて、自分で責任を持って投薬することもで きます。

プレインツリーは、病気の経験により患者の人間性がすっかり生まれ変わる可能性もあると考えています。病気になれば、人生の目標や価値観が見直され、自分 にとっての優先順位が明確化され、自分の内面を見つめなおすことができるため、患者が大きく成長する機会となる場合もあるからです。消費者が利用しやすい健康情報センターや、付属の施設を設置して、患者や家族、そしてコミュニティに向けて数多くの教育用の資料を提供しています。プレインツリーの情報分類システムにより、膨大な量の医療テキストや医学雑誌の中から必要な情報をより簡単に探し出すことができます。ビデオやオーディオテープ、インターネットなどもまた、自身の健康管理や医療に関する情報を豊富に得たいと考える患者をサポートする方法として提供されます。

家族、友人、そして社会からのサポートの重要性

社会からのサポートも、健康を維持する不可欠な要素であることが証明されています。医学研究や社会調査を行う多くの人が、愛されていること、親密であること、つながっていること、そして同じコミュニティに属していることを感じさせる要素はすべて、治癒と癒しの効果が高いことを見出しています。プレインツリーでは、可能な限り、家族や家族以外の大切な人が参画することをサポートし、推奨しています。ケアパートナー・プログラムにより家族に対して教育と訓練 を施すことで、患者の入院中、および退院後の看護に家族が参画できるようサポートします。医療チームに家族以外の大切な人が加わることで、患者の病院における経験の質を大きく向上させることができます。また、身寄りのない患者は、ボランティアのケアパートナーを利用することもできます。こうしたプログラムの一つであるボランティア付き添いプログラムでは、ボランティアに訓練を施して、小規模の手術であれば患者に付き添って手術室に入り、精神的なサポートを提供できるようにしています。プレインツリーのモデルでは、この他にも家族の参画を促すため、全面的に―たとえICUであっても―面会時間に制限を設けないなどの取り組みも行っています。

スピリチュアリティ:内面の重要性

プレインツリーは、患者という全人格が治癒するためには、そのスピリチュアリティも非常に重要であると考えています。患者や家族、そしてスタッフがそれぞれの内面を見つめることをサポートすることで、より治癒効果、そして癒し効果の高い環境を作り出すことができるようになります。教会や庭、そして瞑想のための部屋を設けることで、考え事をしたり祈りを捧げたりすることも可能になり、教会付きの牧師は医療チームの重要なメンバーとして迎えられることになりま す。

触れ合いの大切さ

触れるという行為はケアする心を伝える非常に重要な方法ですが、残念ながら医療の現場ではあまり行われていないのが現実です。患者や家族、そしてスタッフ は、治療効果を高めるボディマッサージ、もしくは椅子に座ったまま行われる上半身のみのマッサージを受けることができます。マッサージ療法士向けのインターンシップ制度や、手や足もみを行うボランティア向けの訓練も提供されて、コストも最小限に抑えられます。ケアパートナー・プログラムの一員である家族も、患者の入院中、および退院後でもマッサージ法を教えてもらうことができます。看護師や医師、そしてその他のスタッフは、椅子に座ったまま首や肩、そして背中を中心とする上半身のみのマッサージを受けることで、ストレスを解消し、元気を取り戻すことが可能になります。

治癒効果を高める芸術:こころの栄養

プレインツリーのモデルでは、音楽や、物語の読み聞かせ、道化師、そしてコメディタッチの映画などを利用して、穏やかで、楽しい雰囲気を作り出すことを提唱しています。患者の居室や治療エリア内に芸術作品を飾ったり、カートにも芸術作品を載せたりすることで、こうした雰囲気が一層高められます。自分で芸術作品を制作したい患者には、ボランティア要員が付き添い、地域コミュニティの画家、音楽家、詩人、そしてプロの物語の語り手に参画をしてもらうことで、結果的に医療施設の垣根を広げることも可能になります。

代替補完医療

この十年間で、補完医療や代替医療(CAM) の利用率、およびそうした医療への出費額は大きく拡大しています。また、消費者におけるこうした傾向が今後も続いていくことが、いずれのデータからも証明 されています。従来型の医療に不満があるためにこうした療法を選択する人もいれば、自分の健康や人生に対する信念や価値観、そして哲学にこうした代替医療 がより近いと考えて、代替医療を選択する人もいます。いずれの場合にも、今では多くの患者が、従来型の医療のアプローチを補完するために、自然で、毒性と 浸襲性が低く、体全体を重視した治療法を望んでいることを認識するのが重要なのです。

興奮状態にある患者に対してアロマセラピーを利用して鎮静効果を高める取り組みは、現在ではMRIの利用の際に、もしくは老年性精神障害を抱える患者に対 して行われています。プレインツリーの病院では、アニマルセラピーも高い効果を上げています。数多くの調査において、ペットは血圧を下げたり、気分を高揚 させたり、社交的な交流を促したり、と、健康に良い影響を与えることが証明されています。

消費者からの補完医療や代替医療への要求に応えるため、プレインツリーの会員施設では、瞑想や治癒誘導イメージ療法、治療を促すマッサージや触れ合い、霊 気、鍼療法、太極拳、そしてヨガなどの、心臓病改善プログラムや心と体双方に対する診療プログラムを設けています。

健康的なコミュニティの重要性

医療の境界線を広げること、つまり、学校や高齢者センター、教会、そしてその他のパートナー・コミュニティや組織と協力をすることで、より大きなコミュニティの健康を保つ、ということが医療の新しい定義となりつつあるのです。