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プレインツリー(Planetree)とは何か?

患者の視点から病院モデルを作ったアメリカのNPO法人の紹介です。(2007/2/25更新)

患者中心の参加型医療をめざして

1978年、アメリカで、アンジェリカ・チェリオットという一人の女性患者があまりに無機質で非人間的な病院サービスに憤慨し、患者の視点から病院モデルを作った。Planetree(プレインツリー)と名づけられたNPO(非営利組織)は、今日まで患者の視点からの医療サービス提供に多大な貢献をしている。Planetreeとは、医学の父ヒポクラテスの弟子らがPlanetreeの木陰で教えを乞うという言い伝えに由来している。

プレインツリー加盟病院

現在全米で約100(2005/10時点)の病院が「 プレインツリーモデル」を導入し、患者中心の医療を実践している。導入病院のひとつ、Mid Columbia Medical Center(オレゴン州・49床)は、 全米で最も早く病院全体に プレインツリーモデルを導入したことで知られている。院内はすべて温かみのある木目調で、キッチンからはボランティアの焼くマフィンの香りが漂ってくる。 看護婦はハンドヘルドと呼ばれる入力端末を携帯しているため、記録を書く必要がなくベッドサイドで過ごす時間が多くとれる。また、ナースステーションは患者がいつでも話しに来ることができるよう、ラウンジスタイルになっている。治療過程に参加する「ケアパートナー」はケアパートナーバッジをつけており、カンファレンスなど常に患者と共に出席する。ケアパートナーの存在によって患者の孤独感や不安が減少する、退院後の在宅ケアが非常に効果的に行われる、といったメリットが報告されている。また家族がいない患者に対しては、ボランティアがケアパートナーとなり、手術室で麻酔がかかるまで手を握っているなどの取組みがみられる。

カルテは患者のベッドサイドに置かれており、いつでも見ることができるだけでなく、本人が体調などを記入することもできる。言語でのコミュニケーションが苦手な患者にとっては新しい表現ツールができたことになる。

コネティカット州にあるGriffin Hospital(グリフィン病院・161床) も、病院全体に プレインツリーを導入した病院である。心地良い音楽が駐車場に流れ、患者はその音楽に誘導されながら病院に入る。入口左手には「コミュニティー・ヘルス・リソースセンター」がある。この病院が特に斬新なのは、職員用と患者用の図書館が同じ場所にあり、患者が希望すれば医学論文なども読むことができるという点である。週に二日は夜8時まで地域に開放されている。疾病ごとに様々な雑誌の記事がファイルされている為、必要な記事のコピーをとることができる。受付には医療司書がおり、どの文献がどこにあるかという情報収集のサポートを行っている。

病棟にあがると各階に「サテライト・リソースセンター」があり、下まで降りてくることができない患者はそこでビデオを見たり、本を読んだりできる。

ペットセラピーや多種多様なアートやエンターテイメントも癒しのために提供される。マッサージのサービスも無料で受けられるが、患者や家族だけでなく職員もその恩恵をこうむることができる。各階にあるキッチンでは、家族が患者に好きなものを作ったり、栄養士が実践しながら退院後の食事指導をしたりする。また、家族の宿泊も自由、面会は24時間可能である。14床すべて個室になっているICUにもこの考え方は浸透しており、ここでも家族の面会は24時間無制限で病室に泊まることも可能である。家族は廊下側のドアからそれぞれの部屋に入るのでスタッフの前を通る必要もなく、また他人から見られることもない。待合室でもなるべく他の患者家族と一緒にならなくてすむよう待合室は4つ用意されており、シャワー室も備え付けてある。患者が亡くなると、ドアに白い花が飾られるので清掃スタッフが不用意に入ってくることもない。

94年にグリフィン病院がプレインツリーに加盟した当初は車で15分以内の距離に大病院が7つもあり、経営的に非常に厳しい状態にあったという。グリフィン病院がプレインツリーに加盟した動機は、他院との徹底的な差別化を図るためであった。今では、州内の大半の病院が伸び悩む中で、グリフィン病院の病床利用率は昨年から4%増加している。

プレインツリーへの加盟病院は30程度であるが、先に述べたMid Columbia Medical Centerとグリフィン病院以外は、病棟単位でプレインツリーモデルを導入している。その例として、BethIsrael Medical Center(ベス・イスラエル・メディカルセンター)の循環器病棟を紹介する。ベス・イスラエルでは寄付を募り、92年に病棟を改装した。患者や家族がリラックスすることのできるアクティビティ・ルームやミニキッチンが病棟内にある。アクティビティ・ルームには疾病ごとのファイルがあり、医療系雑誌などからの記事の切りぬきがまとめられている。医局長のステーブン・ホロウィッツ氏は「当病棟の入院患者さんは十分な教育を受けているため、自分の病気のことをよく知っており、再入院の比率が少ない。」と学習環境の効果を語る。 プレインツリーモデルの導入によって患者満足だけでなく、医療従事者の職務満足も向上したと報告されている。雑務やペーパーワークの減少がその要因ではな いかと考えられている。

プレインツリーに加盟すると

プレインツリーモデルは全米の患者志向型モデルとしては先駆的である。プレインツリーに加盟すると、コンサルティングが受けられるほか、全プレインツリー病院の会合(年1回)やビデオ・電話会議に随時参加することができる。また実際にプログラムを導入するときには、すでに成功している病院から直接アドバイス受けることもできる。さらに プレインツリーというブランド価値が高まってくるにつれ、地域の競合病院との差別化を図ることが出来る。初年度登録料は2万ドル(約200万円)で、次年度からは1万5000ドル(約150万円)となる。99年には プレインツリー・カナダもでき、国際的な広がりを見せている。患者中心の参加型医療をめざして、日本でもプレインツリーの輪を広げていきたい。